千葉市の財政について

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<はじめに>

 千葉市は、平成21年度予算において、実質公債比率が21.1%に達し、横浜市を抜き政令市最悪となった。千葉市の財政が悪化した原因と、再建に向けて、市がどのような取り組みをしているのかについて分析する。

<財政悪化の歴史的背景>

 千葉市では、「助役(今の副市長)だった人が市長になる」といった慣例があった。その例として、歴代で見てみると、宮内三朗・松井旭・鶴岡啓一などが挙げられる。この主に三人が、千葉市の発展に大きく貢献したのは事実である。しかし、千葉市が政令指定都市になったのを機に、都市基盤の整備を理由に、道路の区画整理や、公共事業の推進を進めた。松井旭・元市長は、千葉市の交通渋滞緩和を目的に、「モノレールの建設」を進め、6期にわたり市長を務めた。後に市長を務めた鶴岡啓一・前市長は、市民に「身近な市長」として親しまれたが、財政が悪化し始めていたにもかかわらず、「モノレールの県庁前〜市立青葉病院間の延伸」について議論していた。結果的に凍結となったが、このことからもわかるように、千葉市では、財政に対する危機意識が薄れていたことがうかがえる。他にも、川崎製鉄千葉製鉄所(現・JFEスチール東日本製鉄所千葉地区)の縮小に伴い、千葉市が策定した「蘇我特定地区整備計画」にもとづき、ジェフ千葉の本拠地である、フクダ電子アリーナ(千葉市蘇我球技場)を建設するなど、費用対効果の薄い公共事業を続け、積極的な財政再建に動くことはなかった。また、議会では、公共事業の推進を歓迎する、いわゆる「土建屋議員」が数を占め、市長に圧力をかけ、無駄な公共事業への投資を後押ししたことも一因と考えられる。

<なぜ、公共事業を推進したのか>

 先に述べたとおり、千葉市には、「川崎製鉄」があり、この企業が、千葉市の税収の中心的役割を担っていた。しかし、バブルがはじけ、不景気になると、川崎製鉄は、設備の一部移転を決め、規模を縮小し、「NKK京浜製鉄所」と統合した。このことが拍車をかけ、千葉市の税収が減り、現在は、予算全体の50%前後にまで税収が落ち込んでいる。これに伴い、千葉市は、公共事業に投資をすることで市を活性化させ、税収を増やそうとしたと考えられる。

<財政再建への動き>

 現在、千葉市では、熊谷俊人氏が市長に就任し、財政再建に向け、さまざまな施策を行っている。ここでは、その具体策を示すことにする。

(1)  都市整備公社の解散

 千葉市は、土地開発公社の解散に続き、都市整備公社の解散をきめた。この「都市整備公社」であるが、小中学校やその他の公共施設の建設・改修を委託している外郭団体である。バブル期前後に設立され、千葉市が政令市となり、その都市基盤整備を担った。市が全額出資し、国の補助金が未確定であっても、施設を先行して建設し、確定後に市が買い戻すことで事業拡大を図るという、今では考えられないようなことを行った。最近では、厳しい財政事情により、120億円から42億円に減り、建設・整備中心から維持・補修中心にとどまるようになった。このような理由で市は、先行整備は行わないことを決め、整理手続きに入った。職員は、他団体への転籍が決まった。

(2)  スポーツ施設の民間管理化

 2011年1月17日、千葉市の外郭団体「市スポーツ振興財団」が、人件費のコスト削減とサービス向上のため、35施設で管理運営から外れた。市が公募で民間業者を選定し、NTT関連会社「テルウェル東日本」と「スポーツクラブNAS」に委託した。これにより、市スポーツ振興財団が管理するのは、「千葉ポートアリーナ」1か所のみとなった。また、同じく外郭団体の「市観光協会」でも、千葉市のシンボル「ポートタワー」など4施設で、運営から外れた。

 このようにして、最終的に外郭団体に委託したのは、65施設から24施設となった。千葉市は、民間にすると委託料がかからないというメリットから、「外郭団体の経営見直し指針」に基き、統廃合や民間への委託を推進した。これにより、5年間で20億円のコスト削減を見込んでいる。ただし、独立性の高い団体は、対象から外れている。例えば、市美術館・千葉マリンスタジアムなど18施設は、外郭団体での運営が妥当として、管理者公募をしなかった。

 問題点もある。財団職員は、市職員に準じた高い給与であるため、人件費の削減になる。しかし、公務員の特性上、仕事を失う人に、新しい委託先や他外郭団体の再就職先を探す必要があり、引受先を見つけるのは困難である。

(3)  職員の給与カット

 千葉市では、財政危機の克服に向け、公務員に対し、2010年度より3年間、給与の引き下げを2011年1月24日、正式決定した。幹部・管理職を中心に最大9%カットし、係長級の一部・20代を中心とした若手は、率を緩和する。また、政令市で唯一、退職手当のカットも実施する。この取り組みで、市は年間13億8000万円の削減を見込んでいる。

特別職のカットも行い、市長自らも、任期満了まで50%カットすることを決めている。しかし、市職員のやる気の低下も指摘されている。また、「市政だより」を見ても、平均給与額が国家公務員と比べ依然高く、削減の余地がまだあるのではないかという疑問も残る。 

(4)  その他

 その他にも、レッサーパンダの「風太くん」で有名になった、「千葉市動物公園」の事業を委託している、「市動物公園協会」の23年度末での廃止を決定した。また、千葉市マリンスタジアムへの命名権導入(QVCマリンスタジアムに)、学校の統廃合、千葉都市モノレールの民間人社長登用などを進めている。さらにユニークな取り組みとして、「ごみ3分の1削減」を実施している。老朽化した清掃工場の建て替え費用を抑え、3施設から2施設体制に移行するのが目的である。市は、生ごみ処理機の補助や、雑紙の分別PRを展開しているが、最近になって、削減に限界が来ている。

<最後に>

 これまで、様々な視点から千葉市の財政を見てきたが、千葉市は、公共事業の推進により、財政が悪化したことが分かった。厳しい財政状況になり、これからが正念場である。千葉市では、「モノレールの新型車両導入補助」を控えているが、製造数が少ないためコストが高くつき、23年度予算に11億6000万円を計上し、採算性に課題がある。このようなことを踏まえると、財政再建への見通しの甘さも見受けられる。市長が、「科学フェスタ」や「3世代同居支援」など、特定の市民への支援を講じていることを考えると、まだ削減の余地はあるのではないかと思う。市には、今後一層の歳出削減を期待したい。

<参考資料>

・読売新聞京葉版 地域面

・千葉市勢要覧2003・2005

・市政だより